火山の大噴火による危機
草津白根山(くさつしらねさん)は、群馬県吾妻郡草津町に位置する、標高2,160mの活火山。 南東側に低くなる第三紀火山岩からなる基盤山地上に、非対称に成長した成層火山。西端部の最高所付近に白根山・逢之峰・本白根山等の火砕丘群が南北に並び、それらから東・南方に、数㎞の範囲は安山岩溶岩流の斜面、さらに下方数㎞の範囲はデイサイトの火砕流台地である。安山岩・デイサイトのSiO2
量は53.7~64.2 wt.% である。白根山火砕丘頂部には北東から南西に並ぶ水釜、湯釜、涸釜(かれがま)の3
火口湖がある。
有史以降の噴火は1902
年の弓池付近までを含む白根山山頂周辺で起き、近年の噴火活動はすべて水蒸気爆発である。泥流を生じやすい。草津温泉をはじめ、硫気孔・温泉に富み、硫化水素を発生する噴気活動がある。
各火山について、地質学的な研究によってわかっている過去1万年の火山活動史を記載した。また、過去1万年間の噴火活動と有史以降の火山活動とに分けて記載した。
- 草津白根山 過去1万年間の噴火活動
香草(かくさ)溶岩の噴出は8500 年前、殺生(せっしょう)溶岩の噴火は3000 年前に起こった。最近3000
年以降は、小規模な噴火を繰り返している。
今回の巨大地震シリーズで来るかどうかはっきりしないものの、不気味なのは長野周辺の地震危機である。長野周辺は火山も多く、地震のストレスを貯めこみやすい地域である。過去にも、大きな地震が起きている。1847年にはマグニチュード7.4の善光寺地震が起きているし、1984年にはマグニチュード6.8の長野県西部地震も起きている。善光寺地震では火災もあって八千人ともいわれる死者が出たし、長野県西部地震では土石流などによって二十九人の死者が出ている。
していま、長野周辺は大きなストレスをため込んでいると見ていい。1983年には新潟焼山がP2とみられる噴火をし、同年に草津白根山が噴火している。さらに79年には白山と御岳山が噴火、82年には浅間山が噴火している。新しいところでは、95年に焼岳が噴火している。
これらの噴火に対応する地震があまりみられないだけに、ストレスはまだ開放されていないと思われるのだ。ただ、このストレスの開放が、今回、日本列島で起きている地震シリーズで起きるかどうかは微妙なのである。
この長野周辺には、地震の空白域が4つある。ひとつは、糸魚川から静岡にかけての構造線上にある長野県構造線空白域だ。さらにこの構造線の北には、新潟内陸空白域がある。ここに新潟県中越地震が起こった。また長野構造線空白域の西には、飛騨空白域もある。この両方はともに日本列島断層沿いにある。そして飛騨空白域の南には、岐阜断層帯空白域があり、都合4つの空白域が不気味に沈黙しているのである。
これら長野周辺地域も、過去に大きな地震を起こしてきた。1751年には、新潟内陸空白域でマグニチュード7.4、1858年には飛騨空白域でマグニチュード7.1の地震を起こしている。また、岐阜断層帯空白域の少し北では、1891年にマグニチュード8.0の巨大地震も起きている。
このようにこの地域は一世紀ごとに地震を起こしてきたが、その後、起こっていない。内部でエネルギーがたまっていることは、たしかだろう。ただ、今回の地震シリーズで来るほどたまっているかどうかは、はっきりしないのである。
とくに糸魚川-静岡構造線では、今までに地震がないことも、予測をむずかしくしている。これまで構造線では地震が起きないといわれてきたが、最近ではどうもそうではないという見方が強まっている。
またそれぞれがプレート境界にあるとはいえ、内陸型である。内陸型の地震のくり返し速度は、何百年、何千年に一度というものだから、エネルギーがたまっても持ちこたえてしまう可能性も捨てきれないのだ。
そうはいっても、すべての地域が何十年も無事にすぎるというのは、ありえないことだろう。すでに新潟焼山、草津白根山、浅間山、御岳山、白山など周辺の火山がふいていることを考えあわせても、危険地帯であることは明らかだ。あるいは、空白域に近いところで、プレートが割れてしまうこともないではない。
●今回のシリーズで地震が起きるかどうかは微妙
これから起こりうる地震を個別で見ていくなら、新潟内陸空白域の場合、単純計算では1998年前後と出た。
これは、1970年代の新潟焼山、草津白根山の噴火、80年代の浅間山の噴火から時空ダイアグラムで予想したものだ。
ここでは、2004年に新潟県中越地震が発生した。時期が遅れた問題については、「緊急チェック」を参照していただきたい。
また長野構造線空白域の場合、1995年前後と予想されていた。これは1979年に吹いた御岳山や白山との関連から予想したものだが、今回のシリーズでは地震は起きないのか?だが、この構造線の上で地震が起こっていないことも、気になるところだ。
また、阿寺断層の北方である飛騨空白域では、2011年前後が動く時期と計算される。1979年に噴火した御岳山、白山、95年に噴火した焼岳との関連で、起こるとすればかなり大きな地震となるだろ——–引用ここまで——–
引用文献
『緊急警告 これから注意すべき地震・噴火―阪神・新潟・三宅…を予測した方程式が示す危機』(木村政昭著、青春出版社、2004年刊) P.171~176内を抜粋
1783(天明3)年 |
温泉異常 |
草津温泉温度急上昇、浴客死亡。 |
▲1805(文化2)年 |
水蒸気噴火 |
火砕物降下。噴火場所は湯釜。 長野県方面に降灰、樹木枯死。 |
▲1882(明治15)年 |
中規模:水蒸気噴火 |
8 月6 日。火砕物降下。噴火場所は湯釜、涸釜付近。 泥土噴出し、弓池埋没、樹木枯死、1 か月前から山頂で鳴動、噴火当日の14: 00
頃山麓で遠雷のような音響が聞こえ、その夜噴火。(VEI2) |
▲1897(明治30)年 |
水蒸気噴火 |
7 月8、31 日8 月3-16 日。火砕物降下。噴火場所は湯釜。 1 月頃からときどき鳴動。7 月8 日0:00
従来の湯釜火口の北東200m地点(湯釜火口内)で噴火、泥土・岩塊噴出。同日5:00 その南西200m
地点で再び爆発、熱泥・湯噴出。付近の硫黄採掘所全壊、降灰草津に及ぶ。7月31 日大池の南で地震、鳴動を伴う爆発、泥土・岩塊を噴出、150kg の巨石を900m
飛ばす。8 月2 日鳴動とともに爆発、噴石。8 月3 日にも爆発、負傷者1 名。以後中旬まで鳴動、ときに熱泥土噴出。 |
▲1900(明治33)年 |
水蒸気噴火 |
10 月1 日。噴火場所は湯釜。 |
▲1902(明治35)年 |
小規模:水蒸気噴火 |
7 月15 日、8 月20 日、9 月4、17、23-24 日。火砕物降下。噴火場所は弓池北岸。 7 月15
日噴火し、水蒸気・砂石を噴出、浴場・事務所の建物全壊。8 月20 日小爆発。9 月4~ 6 日しきりに爆発、灰・水蒸気噴出。万座温泉で降灰3 ㎝。9 月17
日鳴動、降灰多量。9 月24 日鳴動、噴石盛ん。(VEI1) |
▲1905(明治38)年 |
水蒸気噴火 |
10 月。硫黄流出。噴火場所は湯釜? |
▲1925(大正14)年 |
中規模:水蒸気噴火 |
1 月22 日。火砕物降下。降灰。噴火場所は湯釜北壁。(VEI2) |
▲1927~ 28(昭和2~3)年 |
水蒸気噴火 |
12 月31 日、1 月29~ 31 日。火砕物降下。噴火場所は湯釜および湯釜火砕丘南東斜面。 岩塊・泥土噴出。硫黄流出、吾妻川・利根川で魚死ぬ。
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▲1932(昭和7)年 |
小規模:水蒸気噴火 |
10 月1、4、6、8、16、18、23、24、27 日。火砕物降下。噴火場所は湯釜,涸釜および湯釜火砕丘南東斜面の亀裂3。 火口付近で死者2
名、負傷者7
名、山上施設破損甚大。泥流、殺生河原降灰、噴出物総量1.6×104m3、爆発エネルギー1.6×1018erg、11
月頃まで活動。(VEI1) |
▲1937~ 39(昭和12~ 14)年 |
中規模:水蒸気噴火 |
火砕物降下。噴火場所は湯釜。 37 年11 月27 日、12 月1、28、30、31 日。38 年1 月1、2、8 日、2 月7、8、13、16
日、7 月22 日、9 月22、26 日、10 月5 日。39 年3 月24、30 日、4 月1-3、5、7、9-19、24、27、28、30 日、5
月3、10、19 日、8 月28 日。11 月27 日爆発、鳴動。12 月1、28、30、31 日爆発、降灰。1938
年にはときどき噴煙活動。1939(昭和14)年2~ 5 月には噴火、降灰。(VEI2) |
▲1940~ 41(昭和15~ 16)年 |
水蒸気噴火 |
4、9 月、翌年1 月。噴煙活動(黒煙)。 |
▲1942(昭和17)年 |
水蒸気噴火 |
2 月2 日。火砕物降下。噴火場所は湯釜・水釜火砕丘南東斜面および北斜面の火口列,水釜北東部 割目を生じ、噴煙、降灰、鳴動、火口付近の施設破損。
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▲1958(昭和33)年または1959(昭和34)年 |
水蒸気噴火 |
火砕物降下。噴火場所は湯釜。火口付近一帯に降灰。 |
1963(昭和38)年 |
噴気 |
湯釜外側南東斜面の噴気活動が衰え、水釜外側斜面の噴気活動が活発化。また、同時に、弓池の水は澄んだ。 |
1971(昭和46)年 |
火山ガス |
12 月27 日。温泉造成のボーリング孔のガス(H2S)もれによる中毒死、死者6 名。 |
▲1976(昭和51)年 |
小規模:水蒸気噴火 |
3 月2 日。噴火場所は水釜北東部。 水釜で小規模な水蒸気爆発。噴気活動は4 月頃から次第に衰える。(VEI1) |
同上 |
火山ガス |
8 月3 日。本白根山白根沢(弁天沢)で滞留火山ガスにより登山者3 名死亡。 |
1977(昭和52)年 |
地震 |
1 月4 日。14:26 局地的な有感地震、最大有感距離約15km、逢の峰・芳ヶ平ヒュッテ震度4 |
▲1982(昭和57)年 |
小規模:水蒸気噴火 |
10 月26 日、12 月29 日。火砕物降下。噴火場所は湯釜北西部および涸釜。 10 月26 日湯釜・涸釜の数か所で小規模な水蒸気爆発。12
月29 日湯釜で小規模な水蒸気爆発。(VEI1) |
▲1983(昭和58)年 |
小規模:水蒸気噴火 |
7 月26 日、11 月13 日、12 月21 日。降下火砕物。噴火場所は湯釜北西部および涸釜北側火口壁。 7 月26
日湯釜で小規模な水蒸気爆発。11 月13 日11: 40 と12: 08 の2回湯釜で水蒸気爆発。人頭大の噴石を600~ 700m
の範囲に放出、降灰は東南東方向、渋川まで達する。涸釜北側火口壁下部に亀裂(幅30 ㎝、長さ45m)を生ず。12 月21 日湯釜と涸釜で小規模な水蒸気爆発。
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1986(昭和61)年 |
地震 |
6 月。地震多発。 |
1987(昭和62)年 |
地震 |
10 月中旬。地震多発。 |
1989(昭和64~平成元)年 |
地震、火山性微動 |
1 月6 日微動。6、7 日湯釜湖面一部暗色変色。10~ 11 月地震多発。 |
1990~ 91(平成2~3)年 |
地震、火山性微動 |
2 月~9 月。地震、微動多発、湯釜湖面度々変色。 |
2004(平成14)年 |
湖水変色、地震 |
5 月17 日。湯釜で湖水の吹き上げが目撃され、その後変色水が確認された。 5 月19~ 22 日。湯釜火口の北西約7km
付近を中心に一時的に地震増加。 |
2008(平成20)年 |
噴気 |
5 月。北側噴気地帯の東側斜面で新たな噴気確認。 7 月湯釜火口内北東部に極めて小規模な噴気孔を新たに確認。 10
月水釜火口の北側斜面で新たな噴気確認。
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2011(平成23)年3 月 |
地震 |
東北地方太平洋沖地震(2011 年3 月11 日)以降、湯釜の北約3km で地震活動が活発化。 |
日本活火山総覧(第4版)(気象庁編、2013)による。
草津白根山では、気象庁が運用を開始した2007年12月1日から噴火警戒レベルが設定されている。群馬県と草津町はレベル1(平常)の段階でも第1次規制として山頂火口の湯釜から半径500メートル以内に立ち入り制限をかけ、当初は夏場の観光シーズンにのみ規制緩和して河口縁の展望台まで続く歩道を開放していた。
しかし、2009年4月10日に半径500メートル域内のごく小規模な火山灰の噴出などへの警戒を呼びかける噴火予報が発表され、その後火口内で新たな噴気が確認されたことから、2010年4月8日開催の草津白根山防災会議協議会において、第1次規制の継続と当面の間緩和措置を見送ることが決定された。
2014年3月から湯釜周辺で火山性地震が増加し、4月頃からわずかではあるが山体の膨張を示す変動が観測された。その後も様々な火山活動の活発化を示す兆候が現れてきたことを受け、2014年6月3日に気象庁は噴火警報を発表し、噴火警戒レベルを「レベル2(火口周辺規制)」に引き上げた。これを受け、即日群馬県は国道292号の草津町殺生河原駐車場前から嬬恋村万座三叉路までの8.5キロメートルを通行止めにし、草津町と嬬恋村は第2次規制区域内の登山道を立ち入り禁止とした。その後、同年6月14日に規制が緩和されて、日中に限り国道292号の通行は可能になったが、山頂付近は駐停車禁止となっており、駐車場や売店も閉鎖されたままである。
ジュセリーノの火山大噴火に関する予言
現在、世界には1530の火山があると言われている。そのうち560は陸地にある火山で、残りは海底火山だ。これらの山では長期にわたって、噴火が増加している。そのため、地球の一部地域、例えば、アラスカ、アイスランド、インドネシア、エクアドル、日本、イタリア、メキシコ、アフリカでは、噴火活動の監視が継続して行われている。日本では、警戒を要する火山が五つあるという。以下、世界で起きるおもな火山噴火を挙げていこう。
・2022年11月1日から25日のあいだに、カナリア諸島でクンプレ・ビエバ火山が噴火し、連鎖反応で大津波を引き起こして、数百万人の死者が出る
・2019年10月6日、ニュージーランドのルアペフ火山で噴火が連鎖的に起きる
・2020年、メキシコのポポカテペトル火山で噴火が始まり、数千人の死者が出る
・2021年5月23日、米ワシントン州南東のセントへレンズ火山が噴火し、数千人の死者が出る可能性がある
・2022年、メキシコのエルチチョン火山で噴火が始まり、記録された中でも最悪の被害をもたらす
・2027年、米イエローストーン国立公園の火山で大規模な噴火が起きる
・2035年12月22日、コスタリカのリンコン二デ:フ・ビエバ火山で大規模な噴火が始まる
・2037年4月13日、ハワイのキラウエア火山が大災害を引き起こす
・2038年9月17日、南米プレートに大きな動き。海底噴火が巨大な津波を引き起こし、ブラジル北部に甚大な被害がおよぶ
・2039年6月18日目、コロンビアのネバドデルルイス火山が噴火、最低でも七万人の死者が出る
・2041年6月、フィリピンのピナツボ火山が噴火、数千人の死者が出る可能性がある
・2042年、イタリアのローマで活動を停止していた火山が再び大規模な活動を始めて、数千人から数百万人単位の死者が出る可能性がある
・2043年7月7日、地殻大変動によりニカラグアのセロ・ネグロ火山で噴火が始まり、
数千人の死者が出る可能性がある
火山の大噴火 |
- ■海外の大噴火の記録
- 約7万4000年前 スマトラ島のトバ火山。ここ10万年(200万年?)では最大級の噴火。トバ湖はこの噴火で生じたカルデラ湖。
- 紀元前1600年頃 エーゲ海のサントリーニ島。
- 79年 古代ローマ、ヴェスヴィオ火山。ポンペイが埋没。
- 1783年 アイスランドのラキ火山。
- 1814年 フィリピン・ルソン島のマヨン山。ふもとの街で1,200人の死者。
- 1815年 インドネシア・スンバワ島のタンボラ山。9万人以上の犠牲者。
- 1902年 西インド諸島・マルティニーク島のプレー山。火砕流がサン・ピエールの町を襲い32,000人あまりが死亡。
- 1919年 インドネシアのケルート山。ラハールが発生し5,100人の死者。
- 1930年 インドネシア・ジャワ島のムラピ山。約1,300人の死者。
- 1965年 フィリピンのタール山。噴火時のベースサージによって約2,000人の死者。
- 1980年5月18日 アメリカ合衆国のセント・ヘレンズ山。山体崩壊。
- 1985年11月13日 コロンビアのネバド・デル・ルイス山。死者21,500名。
- 1991年6月 フィリピンのピナトゥボ山。20世紀最大規模。
■日本の大噴火の記録
- 685年 浅間山
- 1596年 浅間山
- 1640年 北海道駒ヶ岳の噴火で山体崩壊。
- 1707年 富士山(宝永噴火)
- 1741年 北海道の渡島大島で寛保岳が噴火。津波災害を起こす。
- 1783年 浅間山(天明の大噴火)
- 1792年 雲仙普賢岳の噴火と山体崩壊。
- 1902年 鳥島が噴火し島民125名が全滅。
- 1914年 桜島噴火で大隅半島とつながる。
- 1915年 焼岳噴火で梓川をせき止め大正池ができる。
- 1944 - 1945年 有珠山噴火で昭和新山ができる。
- 1946年、1952年 明神礁(海底火山)の噴火。一時、島が出現。
- 1977年 有珠山
- 1979年 御嶽山で水蒸気爆発。
- 1983年 三宅島
- 1986年 伊豆大島三原山、全島避難。
- 1989年 伊豆半島伊東市東方沖海底で噴火。
- 1991年 雲仙普賢岳、平成新山ができる。
- 2000年 有珠山、三宅島で全島避難。
- 2004年 浅間山
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火山の噴火に関するリンク集 |
東日本巨大地震 地震連鎖が日本列島を襲う
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