ヨハネの黙示録とは
■ヨハネの黙示録は、新約聖書の一番最後の書です。著者のヨハネが神に見せてもらった未来の光景を描いたとされるこの書には、戦乱や飢饉、大地震など、ありとあらゆる禍が書かれています。天使と悪魔の戦いや最後の審判の様子も記されています。
ヨハネの黙示録が記されたのは、ローマ帝国のドミティアヌス帝の治世末期の紀元96年頃、あるいはネロ帝の治世末期である68年頃と考えられています。どちらの皇帝も、キリスト教徒を迫害していました。著者のヨハネはイエスの十二使徒の一人とされることが多いのですが、はっきりしたことはわかりません。当時、ヨハネは迫害に遭い、エーゲ海の孤島パトモス島に流されていました。ある日、ヨハネは神の啓示を受け、未来の出来事を目にします。それを書き留め、小アジア(現在のトルコ西部)にある7つのキリスト教信者の団体へ手紙を送ったという設定になっています。
ヨハネの見た啓示は、次のようなものでした。天の玉座に神がいて、周囲を24人の長老と、ライオン、雄牛、人間、鷲(わし)にそれぞれ似ている4つの生き物が取り囲んでいました。神の手には巻物があり、7つの封印で封じられていましたが、7つの角と7つの目をもつ小羊が一つひとつ封印を解いていきます。小羊が封印を解くごとに禍が地上を襲います。小羊が第7の封印を解くと、世界が沈黙で包まれた後、7人の天使が現れて、一人ひとりにラッパが与えられました。今度は天使が一人ずつラッパを吹くたびに禍が地上を襲います。第7の天使が最後のラッパが吹くと、最後の審判が行われることが予告されます。
さらに、7人の天使が7つの鉢に入れた神の怒りを地上に注ぎ、世界に終末が訪れます。救世主イエスが再臨し、神を信じ正しい行いをした人々は復活し、ともに地上を1000年間統治します。1000年後に悪魔が再び現れますが、天から炎が降り注ぎ滅びます。これが本当の世界の終末です。最後の審判で「命の書」に名前のない人は地獄に落とされ、名前のある人は天国に昇ることができます。そして最後に、救世主イエスの再臨はまもなくだと伝え、ヨハネの黙示録は終わります。
新約聖書の最後の書「ヨハネの黙示録」の構成
『ヨハネの黙示録』は、古代キリスト教の小アジアにおける七つの主要な教会にあてられる書簡という形をとっています。七つの教会とは、エフェソス、スミルナ、ペルガモン、ティアティラ、サルディス、フィラデルフィア、ラオディキアです。
文中では著者が自らを「ヨハネ」と名乗り、終末において起こるであろう出来事の幻を見たと語る。
『ヨハネの黙示録』は以下のような構成となっています。
- メッセージ
- 初めの言葉(1:1-3)
- 七つの教会へのあいさつ(1:4-8)
- ヨハネへの啓示が示された顛末(1:9-20)
- 七つの教会へのメッセージ(2章-3章)
- 黙示の内容
- 天における礼拝と小羊の登場(4章-5章)
- 七つの封印の開封(6章-8章5節)
- 七人の天使と災い(8章6節-11章19節)
- 女と竜、ミカエルの勝利(12章)
- 二匹の獣、バビロン崩壊の宣言(13章-14章)
- 第七の災いと七つの鉢(15章-16章)
- 大淫婦の裁きとバビロンの滅亡(17章-18章)
- 天における礼拝(19章)
- キリストの千年の統治の開始、サタンと人々の裁き(20章)
- 新しいエルサレム、キリストの再臨(21章-22章17節)
ヨハネの黙示録・重要預言
天界の玉座に座る神。 その周囲には冠をかぶった24人の長老と大勢の天使。
玉座の前には、それぞれ3対の翼と体の前後に多くの目をもった、4匹の不思議な生き物。
獅子のようなもの、牡牛であるようなもの、人間の顔をもったもの、鷲のようなもの。
どうみても化け物であるが、神を賛美しているから聖なる生き物であるようだ。 玉座の前には、7つの封印で閉じられた巻物がある。
一人の力強い天使が、「封印を解いて、この巻物を開くことのできる者は誰か」と聞いたが、しかし、天にも地にも地の下にも、この巻物を開くことのできる者、見ることのできる者は、だれもいなかった。
長老の一人が言った。 「ユダ族からでた獅子、ダビデのひこばえが勝利を得たので、7つの封印を解いて、巻物を開くことができる。」
玉座と4匹の生き物の間、長老たちの間には、屠られたような子羊が立っていた。子羊には7つの角と7つの目があった。 この七つの目は、全地に遣わされている神の七つの霊である。 (この化け物よのうな子羊はイエス・キリスト)
小羊は進み出て、玉座に座っておられる方の右の手から、巻物を受け取った。
巻物を受け取ったとき、四つの生き物と二十四人の長老は、おのおの、竪琴と、香のいっぱい入った金の鉢とを手に持って、小羊の前にひれ伏した。 この香は聖なる者たちの祈りである。
神とイエスをたたえる歌声が天界に響く。その中で小羊のイエスはおもむろに封印を解き始める。
第1の封印が解かれると、弓を持った騎士が白い馬に乗って現れた。
第2の封印が解かれると、剣を持った騎士が赤い馬に乗って現れた。
第3の封印が解かれると、秤を持った騎士が黒い馬に乗って現れた。
第4の封印が解かれると、『黄泉』を従えた騎士が青白い馬に乗って現れた。
4人の騎士にはそれぞれ戦争と内乱と飢饉と疫病によって、地上の4分の1を支配し殺す権限が与えられた。蹄の音も高く彼らが駆け去ったあと、第5の封印が解かれた。
すると血まみれの殉教者たちが現れ、口々に叫んだ。 「主よ!どうか私たちが流した血の報復をしてください!」
続いて第6の封印が解かれた。すると地上に大地震が起こり、太陽は光を失い、海は血と化し、星は地に落ちた。
その時、神の刻印を手にした天使が現れ、イスラエルの全部族から14万4000人の心正しき人を選抜して、その額にみしるしを刻んだ。みしるしは免罪符である。彼らは神とイエスの怒りから免れることができる。
そして第7の封印が解かれた。
しばしの静寂があり、やがて静けさの中を、それぞれラッパを手にした7人の天使がしずしずと進み出る。続いて金の香炉を持った別の天使が現れ、祭壇の前に立つ。香の煙が聖徒たちの祈りと共にもうもうと立ち昇る。天使は香炉に祭壇の火を満たす。祈りを込めてそれを地上に投げつける。
走る稲妻。轟く雷鳴。波打つ大地。ついに裁きの時が来た
ヨハネの黙示録は未来の予言か、ローマ帝国への抵抗か |
「ヨハネの黙示録」の解釈には昔から議論が尽きません。それは黙示文学というわかりにくい形式で書かれているためです。「黙示」とは、覆いを取り去って、隠されていたものを明らかにするという意味です。人間が直接知ることのできない世界の始まりや終末、神の意志といったものを、たとえ話を使って説明する形式です。
そのためか、「ヨハネの黙示録」には象徴的な数字や生き物がいくつも出てきます。最も有名なのは、獣の数字とされている「666」でしょう。映画や小説で悪魔を指すとされるこの数字ですが、「ヨハネの黙示録」では具体名の記述はないものの、人間とはっきり書かれています。その筆頭候補は、暴君として有名なネロ帝(在位紀元54~68年)です。ネロの名前をヘブライ文字で表し、それを置き換えた数字をすべて足すと「666」になるといわれています。ほかにも、淫乱な女性の姿で表された「大淫婦バビロン」は、首都ローマを示しているともいわれています。
もし「ヨハネの黙示録」が、当時キリスト教徒の迫害を強めていたローマ帝国に反発し、各地の信徒を励ます目的で書かれていたとすれば、信徒にはわかるが、ローマ人にはわからないような工夫が必要です。そのため、黙示文学という形式を使ったのかも知れません。
しかし一方で、「ヨハネの黙示録」に書かれていることはすべて真実で、書かれているとおりに世界の終末が遠からず来ると信じる人々が今でも後を絶ちません。核兵器やテロの恐怖、地球温暖化などの環境問題、HIVや鳥インフルエンザなどの新しい疫病など、現在、世界が抱える問題は、その証拠だと考えるのです。聖書の一字一句が文字通り真実で、誤りや矛盾は決してないと考える、キリスト教根本主義者などがその例です。
|
ヨハネの黙示録関連リンク集 |
SUB MENU1 |
SUB MENU7 |
|